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交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭ってしまったらどうする? -実感編-
あやせ駅前整形外科・内科では、今日も交通事故でお悩みの患者さんが来院されています。そのケースは様々で、まれに交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭遇されてしまう方もいらっしゃいます。
今回は前回に引き続き、交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭遇した場合の損害賠償の仕組みについて、実際のケースをお伝えしていきながら、皆さんにも実感していただければと思います。
【前回までのあらすじ】
前回のお話のまとめとして、
○第1事故も第2事故も自賠責保険によって補償される
○場所や発生した時間の観点で、同時事故と異時事故に分けられる
○責任の所在により共同不法行為と異時共同不法行為に分けられる
○第2事故で第1部位のけがが悪化した場合は異時共同不法行為として扱われる
○第1事故と第2事故に関連性がなければ異時共同不法行為としてみなされない
ということをお話しさせていただきました。
詳しくは、前回の記事《交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭ってしまったらどうする? -基礎編-》
をご覧くださいませ。
【共同不法行為と異時共同不法行為の補償の違い】
それでは共同不法行為と異時共同不法行為とでは、その補償に違いがあるのでしょうか?
基本的には1人の被害者に対して、複数の加害者が共同して補償するという考え方は一緒です。しかし、自賠責保険に対して、どこに、どれだけの補償を請求できるかに違いがあるようです。
(1) 共同不法行為の補償
Aさんに対してBさんとCさんが交通事故による共同不法行為が発生したとします。
具体的には、制限速度20km/hを超えた速度でBさんの運転する車両にAさんが同乗しており、対向車線を走行する制限速度20km/hを超えたCさんの運転する車両と接触し、Aさんがケガをしたとします。
BさんもCさんも制限速度20km/hを超えて走行して接触しているので、これだけで不法行為が成立します。
そしてこの時、Aさんに100万円の損害が発生したとします。
BさんとCさんの過失割合が5:5だとして、
Bさん50万円、Cさん50万円の合わせて100万円となります。
ただし、AさんはBさんに対して50万円、Cさんに対して50万円とバラバラに請求しなくても、自賠責保険ではBさんか、Cさんに100万円を請求することが可能とされています。
これは、民法第719条に定義されている「共同不法行為」として記載されています。
(2) 異時共同不法行為の補償
共同不法行為との一番の違いは異時共同不法行為は、法律に明記されているわけではないという点です。
これは交通事故の損害賠償に携わる保険会社や弁護士など、実務的に用いている概念とされています。
そのため、異時共同不法行為とみなされた場合は、負傷した部位の補償について、保険会社や弁護士間でどう取り扱うかが争点となります。
多くの場合、第2事故が発生した時点で、第1事故の損害賠償請求は完了され、新たな損害賠償については第2事故の事故の加害者に引き継がれます。
共同不法行為のようにどちらかの加害者に賠償請求ができる訳ではないようです。
これは、第1事故と第2事故とで賠償を行う保険会社を分けた方がトラブルが生じにくいためのものと考えられます。
逆に言うと共同不法行為において同一部位の障害があった場合(異時共同不法行為があった場合)、それぞれの自賠責保険に対して120万円の範囲で支払いを受けることが可能です。
また、後遺障害の等級認定に関しても、双方の自賠責保険に申請することが可能です。
【異時共同不法行為になりうるケースと保険会社の対応ケース】
それでは実際の異時共同不法行為のケースでは、保険会社や加害者はどのような動きが想定されるのでしょうか?
例えば、以下のようなモデルケースになります。
[モデルケース]
Aさんが乗車する車両が信号で停車中、後方からBさんの運転する車両が追突。
Aさんはむち打ちのケガを負い、3か月ほどで改善の見通しであった。
しかしその3日後、Aさんは全く違う場所でバイクで信号停車中、Cさんの運転する車両に後方から追突されてしまった。
その結果、むち打ちの症状が悪化し、ケガが治るまでに半年以上を要した。
上記のケースの場合、Aさんは誰に対して、どれだけの賠償を求めればよいのでしょうか?
実は前述のとおり、異時共同不法行為において実際に補償の責任を話し合うのは、加害者ではなくその保険を扱う保険会社です。
※法廷上では弁護士も介入することになります。
そのため、保険会社同士では以下のような主張が想定されます。
①第1事故、Bさんの主張
Cさんが起こした第2の事故さえなければ、Aさんのケガは3か月程度の治療で改善の見通しのはずだったので、それ以降の期間については賠償する責任はない。
②第2事故、Cさんの主張
2つ目の事故でAさんにケガを負わせてしまったのは事実。しかし、治療が長引いているのは、そもそもBさんが1つ目の事故でAさんにケガを負わせていたのだから、補償の範囲は限定される。
被害者であるAさんにしてみれば、こんなやり取りはどうでもよく、事故により負った心身の治療や補償を安心して受けたいと考えるはずです。
【異時共同不法行為になりうる事故において注意すべきこと】
上記のケースのように、異時共同不法行為になりうるケースでは、その責任の所在が複雑になることがあるようです。
ただし前述のとおり、以下のケースではさほど問題にならないケースもあります。
①第1事故の症状が症状固定されたのち、第2事故が起こった場合。
②第1事故の治療中に第2事故によりケガを負ったとしても、ケガを負った部位が全く異なる場合
上記の場合は、別々の事故として取り扱われ、それぞれの状況に合わせ補償されます。
一方で、異時共同不法行為になりうるケースでは、一般的には、スムーズに補償を提供する観点で、保険会社同士の話し合いにより、2つ目の事故の保険会社が一括して取り扱う場合が多いようです。
それでも保険会社によっては話し合いがもたれず、示談を迫る担当者もいるようです。
1つ目の事故の示談を受け入れた場合、2つ目の事故の保険会社から「1つ目の事故との連帯責任となるため、全ての賠償ができない」とトラブルになることもあるようです。
このような観点から、保険会社同士で話し合いがされていたとしても、後で問題が浮上してくる場合もあるため、可能な限り第1事故、第2事故の示談は同時に行うのが望ましいとされています。
【後半まとめ】
共同不法行為において実際の場面では、かなりの混乱が想定されます。
特に異時共同不法行為に該当するケースはまれなものの、当事者が複数人存在することから、お互いの主張なども絡み、悩まれる方も少なくありません。
治療に集中したくても、保険会社や周りの状況で、安心して治療が受けられないとすればそれは大変不安に感じることでしょう。
今回掲載した事例はあくまで氷山の一角です。
交通事故に遭遇した患者さんが、一日でも早く精神的にも身体的にも、その苦痛から解放されることを心より願い、これからも私たちは交通事故治療と向き合っていきます。
あやせ駅前整形外科・内科は、交通事故治療のお困りごとやお悩みなど、いつでもご相談をお待ちしております。