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交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭ってしまったらどうする? -基礎編-
今日もあやせ駅前整形外科・内科では、交通事故により起こる様々な症状で悩まれる患者さんが通院されています。
交通事故の状況も様々で、自動車同士の事故はもちろん、車両と人との接触事故など、通勤中やレジャーの途中などタイミングも様々です。
しかしまれに、不運にも交通事故の治療中に、別のタイミングや状況で再び事故に遭われてしまう患者さんもおられます。
一度つらい思いをされているにもかかわらず、再び事故に遭うことによる心身への負担は計り知れないものがあります。
また、1度めの事故でむち打ちになったにもかかわらず、2度めの事故で症状が悪化した場合、どこに対して、どのように損害請求すればいいのか?
不安も重なることかと思います。
そこで今回は、交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭遇した場合の損害賠償の仕組みについて、前半・後半の2回に分けてお話ししていこうと思います。
まずは前半となる基礎編です。
【2つ目の事故は誰が補償するのか?】
交通事故によるケガの補償は、加害者の加入する自賠責保険によって補償されるのが原則です。そのため、1つ目の事故(以下第1事故)も、2つ目の事故(以下第2事故)も自賠責保険によって補償されます。
自賠責保険は運転者それぞれが個人ごとに加入しているため、第1事故も第2事故も、それぞれの自賠責保険によって補償されます。
つまり、2つの自賠責保険によって補償されることとなります。
ただし、その事故のタイミングや場所によって、それぞれの自賠責保険の補償範囲が変わってきます。
【1つの事故に複数の加害者】
今回のテーマは「1つ目の交通事故の治療中に2つ目の交通事故にあった場合」としていますが、この状況を理解するためには、
(1) 1つ目の事故と2つ目の事故のタイミング
(2) それぞれの責任の所在
という2つの側面に分けて考える必要があります。
それではそれぞれについてみてみましょう。
【1度目の事故と2度目の事故のタイミングによる分け方】
交通事故は、事故が起きた場所や発生した時間の観点で、同時事故と異時事故の2つに分けることができます。
① 同時事故
1つの交通事故の発生時間と発生場所がほとんど同一である場合を指します。
大きく2つのケースが考えられます。
<ケース1> ~1人の加害者により複数の被害者が発生するケース
友人とドライブ中、信号で停車していた際に後方から追突され、運転者と助手席に搭乗していた友人の2人がケガをしてしまったケース。
<ケース2 >~複数の加害者により1人の被害者が発生するケース
高速道路の渋滞で、後方から車に追突され、その後続の車もブレーキが間に合わず追突するなどの、いわゆる玉突き衝突により、先頭車両の運転者のみがケガをしてしまったケース。
ただしケース1では、助手席にいた友人がシートベルトを締めていなかった場合、運転者が安全義務を怠ったものとして、運転者も加害者とみなされる場合もあるようです。
② 異時事故
第1事故と第2事故との間に時間的経過がある場合を差します。
例えば同一の被害者が、第1事故としてA月B日にC交差点で信号停車中に後方から追突された事故、第2事故としてX月Y日にZ交差点で横断歩道横断中にひかれてしまった事故、これらは時間と場所が違うため異時事故となります。
【責任の所在による分け方】
交通事故において、複数の加害者が存在する場合、その責任の所在の観点でも2つの分け方ができます。
①共同不法行為
交通事故において、複数の加害者が関連して1つの交通事故を構成した場合、共同不法行為として扱われます。
この場合,民法719条1項
「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害賠償する責任を負う」
の規定にしたがい、第1事故の加害者と第2事故の加害者が連帯して、損害賠償責任を負うこととなります。
被害者は第1事故、第2事故の加害者に対して損害賠償の請求を行うことができますが、それぞれの加害者の過失割合に関わらず、第1事故、第2事故の加害者の一方にすべてを請求することができるとされています。(不真正連帯債務と言います)
②異時共同不法行為
玉突き事故のように時間と場所が同一の場合は、同時事故としてみなされる場合もありますが、一度目の事故で負ったケガの部位を、時間と場所を別にして2度目の事故で悪化させてしまうケースもあります。
このように、第1事故と第2事故において、時間と場所の異なる異時事故であって、ケガをした部位が第1事故と第2事故で同一であった場合、これを異時共同不法行為と呼びます。
交通事故によって起こった同一のケガの経過に、複数の加害者が関与する場合、それぞれの加害者は異時共同不法行為者として取り扱われる可能性があります。
ここで注意が必要なのは、第1事故の症状が第2事故発生時にすでに症状固定されていたか否かによって取り扱いが変わるということです。
症状固定とは、治療によりこれ以上の症状改善が期待できない状態のことを指します。
第2事故が発生する前に、第1事故の症状が症状固定となっていた場合は、それぞれ別々の扱いとなり、異時共同不法行為とはみなされません。
しかし、第2事故発生前に、第1事故が症状固定していなかった場合、傷害の部位が同一であれば、異時共同不法行為として取り扱われる可能性があるのです。
【前半まとめ】
交通事故の治療中に2度めの交通事故に遭ってしまった場合、1対1での交通事故に必要な知識よりも、より深い知識が身を守る手立てとなりそうです。
今回のまとめ
○第1事故も第2事故も自賠責保険によって補償される
○場所や発生した時間の観点で、同時事故と異時事故に分けられる
○責任の所在により共同不法行為と異時共同不法行為に分けられる
○第2事故で第1部位のケガが悪化した場合は異時共同不法行為として扱われる
○第1事故と第2事故に関連性がなければ異時共同不法行為としてみなされない
ということになるかと思います。
次回は、共同不法行為と異時共同不法行為の補償の違いや、実際のケースを想定した解説をしたいと思います。
あやせ駅前整形外科・内科では、交通事故治療に力を入れて取り組んでおります。
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