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リモートワークで急増!?肩こりは国民病!?
リモートワークで急増!?肩こりは国民病!?
突然ですが、皆さんは首の痛みや肩こり(肩の痛み)を感じたことはありませんか?
最近では、新型コロナウイルスの影響でテレワークが増え、今まで以上に肩こりをひどく感じている方も多くいるようです。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、日本人の有訴者率(自覚症状を訴える人の割合)の男性:2位・女性:1位は肩こりであることが分かっています。
肩こり症状は男性で1000人中57.2人、女性で1000人中113.8人が訴えています。
これを人口比で計算してみると、国民の約1700万人(東京都の人口が約1400万人)が肩こりを訴えていることになります。
このように、多くの人が肩の慢性的な痛みに悩まされています。
当院の外来でも、肩こり・首の痛みで来院される方も多くいらっしゃいます。
「国民病」とも言えるこうした症状はなぜ起きるのでしょうか?
今回は、首の痛みに関わる3つの要因を、デスクワークと姿勢の観点を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。
1:同じ姿勢が続くと筋肉が硬直してしまう?
2:長時間の同じ姿勢を続けていると負のスパイラルに陥りやすい
3:現代社会では身体を動かす機会が減っている
★1:同じ姿勢が続くと筋肉が硬直してしまう?★
椅子に座って作業していて、立ち上がると固まっている感じがあり、つい伸びをしたくなりますよね。
人の身体は動いていないと固まってしまいます。
そのため、同じ姿勢が続くと身体が重く感じ、動きづらい・痛みに変わってしまいます。
適度に動いている筋肉は筋肉のポンプ作用によって血液の循環を促すことにより、栄養や酸素が筋肉に運ばれます。
このように筋肉が動くことで、筋肉に溜まっていた「疲労物質(リン酸や乳酸など)」を押し流してくれる効果もあり、少しずつ身体が動かしやすくなります。
★2:長時間の同一姿勢を続けていると負のスパイラルに陥りやすい★
一つ目でお話しした通り、長時間同じ姿勢でいると筋肉は疲労が溜まった状態になり、徐々に筋肉が固くなっていきます。
当然、身体の血行は悪くなり筋肉に必要な栄養や酸素が届かなくなります。
さらに血液が押し流してくれるはずの「疲労物質」が溜まっていきます。
「疲労物質」が溜まると最初に感じるのが疲労感を感じ、徐々に【こり】や【痛み】などの不快感に変わってしまいます。
皆さん、痛みを感じると自然と身体に力が入ってしまいませんか?
人の身体は痛みを感じると緊張してしまいます。
すると、さらに身体の血行が悪くなり「疲労物質」が溜まり、より強い痛みを感じるようになります。
このスパイラルを繰り返すうちに慢性化して中々痛みが取れなくなってしまいます。
★3:現代社会では身体を動かす機会が減っている★
【ならば、どんどん運動して身体を動かせばいいじゃないか!】
と思うかもしれませんが、痛みや疲労感があるとついつい身体を動かすことが億劫になってしまいませんか?
特に、コロナ禍による自粛生活を余儀なくされ、テレワークや自宅で過ごす時間が増えたことで、今まで以上に身体を動かす機会が減っている方が多いと思います。
さらに近年では、スマートフォンを見る姿勢によって肩こり・頚部痛を悪化させてしまい、若い方(10代~20代)の肩こりを自覚されるケースが多くなっています。
—ちょこっとブレイク—
「肩こり」の名づけ親は【夏目漱石】!?夏目漱石の長編小説『門』という作品の中で、「頸と肩の継目の少し背中へ寄った局部が、石のように凝っていた」と表現されています。
これが「肩がこる」と表記された最初とされ肩こりという言葉を広めたのは夏目漱石だといわれるようになったそうです。
昔は現代みたいにテーブル・椅子などもなかったことも肩が凝りやすい要因になってそうですね。
首に負担がかかって起こる痛みは、先程説明した3つの要因が作り出す、いわゆる【悪い姿勢】が原因となることがほとんどです。
ではなぜ、姿勢によって様々な影響を受けるのでしょうか。
一つずつご説明します。
—人の頭は体重の約10%の重さ—
頭の重みを支えるために首や肩には常に負担がかかっています。
さらに姿勢ひとつでこの負担は大きくなります。
例えば体重50㎏であれば頭の重さは約5㎏となります。
首がまっすぐ立っている状態(0度)であれば頭部本来の重さ(5㎏)しかかかりません。
ところが、パソコン・スマートフォンを見る姿勢の15度下に傾いた場合はどうなるでしょう?
頭の重さは約12㎏となってしまい、約2倍の負担が首や肩にかかります。
さらに30度傾いた場合で【約3倍】、45度傾いた場合で【約4倍】、60度傾いた場合で【約5倍】の負担がかかるとされています。
気付かぬうちに、スマートフォンを操作していると真下を向いていませんか?
デスクワークやスマートフォンでSNSを見たりゲームをしたりすれば30~60分くらいはあっという間に過ぎてしまいますよね。
この時間も持続的に頚部や肩に負担をかけていることになります。
—よく整形外科で耳にするストレートネック―
多くの時間を前傾姿勢(下を向く姿勢)で過ごすことで起きる問題が「ストレートネック」といわれるものです。
昨今では「スマホ首」とも呼ばれているそうです。
首の骨がまっすぐになってしまうことだと知っている方も多いと思います。
では、まっすぐだとなぜいけないのでしょうか?
正常な頚椎 |
正常なカーブを描いた首は、真下からしっかりと
重い頭を支えることができます。
これに対してストレートネックの場合はカーブが
失われ頭の重心が前に移動してしまいます。
そうなると骨だけでは、頭の重さを支えることが難しくなってしまい、首や肩の筋肉に頼ることが多くなります。
結果、こりや痛みがさらに悪化してしまいます。
ストレートネック |
ストレートネックが起きている状態で、交通事故などの強い衝撃が加わると、むちうちの症状が出やすくなる人が多くみられます。
人によっては頭痛・手のしびれ・握力低下など症状を悪化させてしまう要因にもなります。
当院に交通事故に遭ってしまい、治療を受けられている方もストレートネックにより症状が悪化してしまう方がいらっしゃいます。
その為、早期に治療が必要な事例も少なくありません。
—ストレートネックの予防はないのか—
まず、簡単にできることとして「環境設定」が挙げられます。
原因はデスクワークでいうと、【テーブル】と【椅子】です。
一般的にオフィス用デスクは72㎝。
ダイニングテーブルの高さは65~70㎝が多いそうです。
そして椅子の高さはオフィス用が40~42㎝。
ダイニング用は45㎝前後となっているそうです。
まとめると…
自宅のダイニングはオフィスと比べてテーブルは低く、椅子は高いという環境です。
そのような環境ではオフィスと比べ、ノートパソコンのディスプレイやキーボードが低い位置になります。
その結果、猫背や悪い姿勢になり長時間作業すると頭を支える力が増えてしまい、首~肩への負担が大きくなります。
【まとめ】
まず大事なのは、痛みを引き起こす悪い姿勢をとらないようにすること。
姿勢に気をつけていてもパソコンの画面位置の関係から、顎の突き出しは見落としがちです。
まずは環境を変えてあげるのが得策ではないでしょうか?
机や椅子の高さを見直してあげ、パソコン画面の位置を調整しましょう。
背筋(せすじ)を伸ばして座ったとき、視線と同じ高さに画面中央がくるのがベストです。
下を向いている姿勢が続くといつの間にか真下を見る姿勢になってしまいます。
低くて柔らかく、体が沈むようなダイニングソファは仕事には不向きです。
ダイニングセットの椅子のような、仕事仕様ではない椅子であっても、高さが合えば首や肩への負担を軽減できます。
もう一つは、適度な運動をしてあげることです。
最近、youtubeやインスタでもご自宅でできる運動がありますが、全て自分に合うとは限りません。
『同じように真似してみたら、次の日痛みが強くて身体が動かなくて、来院しました』とお話しを聞くこともあります。
当院では医師の指示のもと、リハビリスタッフによる自宅での運動指導や姿勢指導を行っております。
首に痛み・肩の痛みがあり、お困りの方はご来院のうえ、ぜひご相談ください。