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五十肩は痛くても動かした方が早く治る? -第1回 五十肩になりやすい習慣とは?-
あやせ駅前整形外科・内科では、数多くの整形疾患を治療していますが、その中でも割合として多いのが「肩関節」の病気です。
骨折などの外傷から原因がはっきりとしない肩の痛みなど、その症状も様々ですが、中でも多いのが一般的に「五十肩」「四十肩」と呼ばれる病気です。
来院される患者さんのお話を聞いていると「知り合いから、五十肩は痛くても動かしたほうが早く治ると聞いた」と伺うことが多くあります。
確かに世間的にはよく耳にするお話ですね。
ではこの「痛くても動かしたほうが早く治る」というのは本当なのでしょうか?
結論から申しますと、時期によってその対処は、逆に症状を悪化させる場合があります。
つまり、「痛みをこらえて動かしてはいけない時期」と「動かしたほうがいい時期」があるということです。
今回は、「五十肩」について、
○五十肩ってどんな病気?
○どんな人がなりやすいの?
○動かしていい時期と悪い時期は?
○どう対処すればいいの?
などについて深堀していきたいと思います。
【ところで「肩関節」ってどこですか?】
お話を始める前に、みなさんは「肩」と聞いてどこをイメージしますか?
「いやー、肩がこったわー」
「野球で肩を痛めたんですよ」
「肩甲骨が固いってよく言われるんです」
いろんな話を聞くと思いますが、それぞれ肩のイメージが違うと思います。
ではこれからお話しする「肩関節」の位置を確認していきましょう。
まず、左手を前から回して右の首筋を触ってください。
(左肩が痛い方は反対側で確認してみてください)
そのまま外になでおろしていくと、ショルダーバックをかける位置になります。ここは「僧帽筋」と呼ばれる場所で「肩こり」を感じたりする場所になります。
そのまま腕までなでおろしていくと、いわゆる肩の付け根に当たります。腕を前後に振ると動く場所です。ここが「肩関節」になります。
肩甲骨と鎖骨、上腕骨で構成されていますが、その動きには背骨や肋骨、胸骨までもが関与しており、それゆえに肩関節は身体の関節の中でも、一番自由度が高いとされています。しかし裏を返すと、自由度が高いということは逆に不安定になりやすいという側面もあり、脱臼しやすい関節としても知られています。
【五十肩ってどんな病気?】
五十肩の歴史は古く、江戸時代である1797年に発行された「俚言集覧(りげんしゅうらん)」には下記の通り記載されており、最も古い記録とされています。
「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう」
時代も変わり、生活習慣や体力の変化などから、40歳代の方にもこの症状が多くなってきたたことから「四十肩」などともいわれるようになり、現在ではどの世代でも起こる病気となっています。
「五十肩」は医学的な病名ではなく、医療現場では「肩関節周囲炎」と診断されます。
読んで字のごとく、肩関節の周囲で炎症を起こす病気です。
かなりアバウトな診断名ですが、主に肩関節を包んでいる袋状の組織である関節包で炎症を起こすことで伸び縮みが悪くなり、可動域が狭くなったり、強い痛みを感じたりすることが特徴です。
具体的には、炎症を起こしている場所によって細かな分類があり、肩関節周囲炎の中には、烏口突起炎、上腕二頭筋腱炎、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性骨板炎などが含まれます。
最近では「凍結肩」や「有痛性肩関節制動症」などとも呼ばれています。
【どんな人が五十肩(肩関節周囲炎)になりやすいの?】
肩関節は自由度の高い関節であり、逆に不安定な関節であることを前述しましたが、この不安定性を補っているのが、肩関節を覆っている筋群の柔軟性と筋出力です。
当然それだけではなく、靱帯や関節構造そのものにも肩関節の動きを補償するメカニズムはありますが、周囲を覆う筋群の役割はとても大きく、逆にそれが阻害されることで肩関節のトラブルにつながりやすいとも言えます。
それでは日常的に肩関節周囲の筋群や組織に負担をかける習慣とはどのようなものがあるのでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
①「巻き肩」を主体とした不良姿勢が習慣化している
一般的に、立っている姿勢や座っている姿勢でも、上から見て、両肩と背骨をつないだ線はほぼ直線上となるのがよい姿勢とされています。
しかし「巻き肩」になってしまうと、この両肩は前内方に出てしまい、背骨と両肩を結んだ線がCの字になってしまいます。
まるで巻き爪のように肩が内側に巻いてしまうので「巻き肩」と表現されたりします。
※詳しくは当サイトの医療情報の2023年3月2日に掲載されております「その姿勢、巻き肩になっていませんか?」をご参照ください
通常、腕を挙げる際には、肩甲骨と上腕骨(腕の骨)が共同して動きますが、その割合は1:2とされています。つまり、肩甲骨の動きが悪くなることで、6割程度しか肩関節が動かなくなってしまうということです。
また、巻き肩の姿勢は肩が前に出ることで、肩関節そのものの位置関係を悪化させてしまいます。位置関係が悪くなると周囲の筋群はスムーズに活動できなくなり、過剰な努力を要求されてしまうほか、逆に活動しにくくなる筋群は活動性が低下してしまい、萎縮を起こしてしまいます。
これをきっかけに、肩関節を構成する肩甲骨の一部と上腕骨、周囲の組織や筋群が物理的に摩擦や挟み込みなどを起こし、炎症症状を引き起こすこともあるのです。
②肘を曲げたままの姿勢で長時間作業することが習慣になっている
肩の関節を覆っている筋群の中には、肘の動きに関係する筋群が含まれています。その中でも肘を曲げる筋の一部は肩関節の前方を通過して関節内部に到達しています。実はこの肘を曲げる筋は、筋膜という組織を介して手関節や指の動きにも関与しています。
つまり、肘を曲げっぱなしで同じような動きを繰り返していることで、この筋群が硬くなってしまうことで、最終的に肩関節の痛みに関与してしまうわけです。
書類の整備やPC仕事などのデスクワークがメインの方、スーパーのレジや調理業、美容師などの仕事の方に比較的多い印象です。
③強い力で腕を使うことが習慣になっている
肩関節を構成する筋群は大きく分けると2つに分けることができます。
一つは大きな力で関節をダイナミックに動かすための筋群。もう一つは弱い力で関節を支え、関節の位置を整えてくれる筋群です。
日常的に重量物を持ち上げたり、過度な筋トレをするなど、瞬発的な活動を頻繁にされている方は、大きな力でダイナミックに働く筋群が優位に活動することになります。これが習慣化すると弱い力で関節を支えている筋群の筋力を上回ってしまい、適切な関節の位置関係を維持できなくなってしまう場合があります。
弱い筋群は関節の位置を整えようと過剰な努力が求められ、大きな負担が強いられ、痛みに繋がっていきます。
④就寝時、同じ方向を向いて寝ることが習慣になっている
ヒトの体の構造として、下肢は体重を支えることに特化した構造になっていますが、上肢は作業することに特化する構造になっており、下肢のように体重を支える構造としては十分とは言えません。そのため、関節構造自体も荷重に対して体制が備わっておらず、長時間の荷重で関節やそれを支える筋群にストレスを与えやすくなります。
慢性の腰痛や巻き肩の習慣がある方は、比較的あおむけで寝るのが苦手な印象です。そのため横向きで寝ることが多く、どちらかを向いて寝ている時間が長くなる傾向があるようです。またテレビを横になってみるとき、いつも同じ向きと姿勢でいる方も、同じ側の肩関節に負担がかかりやすいと言えます。
当院に肩関節の治療で通っている患者さんのほとんどは、最初、片側の肩の痛みを訴えて来院されます。しかし稀に、途中から反対側の肩の痛みを訴える患者さんもおられます。これは痛い側の肩を下にして寝ることができず、反対側の肩を下にして横向きに寝ることが多いことに由来しているように思えます。いつも同じ向きでいると楽なのですが、姿勢のバリエーションを多く持つことが大切と言えます。
【第1話 まとめ】
五十肩(肩関節周囲炎)に繋がりやすい姿勢を振り返ってみると、世代に関係なく起こりうる病気だと解ります。
一昔前は、40歳代や50歳代に体力が低下したり、仕事量が多かったりなどして、この症状が好発したものと思われますが、現代では全般的な体力の低下や、働ける年齢が伸びたことでどの世代でも起こりうる病気であると考えます。
肩関節の痛みにつながる習慣を見直すなど、日ごろからの意識づけが大切ですね。
次回は、五十肩の動かしていい時期と悪い時期について、お話ししていきたいと思います。
肩の痛みについてお悩みの方は、あやせ駅前整形外科・内科までお気軽にご連絡ください!